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「あ、あ、あぁあ゛あああああああああーーっっ!!!!」 黒と赤、ピンクの肉片、赤、あか赤……。 その咆吼が、自分のものだと気付くのにしばらくかかった。 (どうして……) こんなことになってしまったんだろう。 部室にいたら突然パソコンの電源が落ちて。 悲鳴が聞こえて。 どうしてどうしてどうしてどうしてどうして……、 「うーん、困りましたねえ、無傷ですか、」 声が、とおくから響く。 コレはなんだろう。ちぎれた手。にんげんの。 何でテクびだけがここにあるのだろう? かなえだったモノ内田だったモノ人間だったモノ赤と黒。そしてピンク。 「対戦車ライフルまで効かないとは、」 扉を開けたらかなえが倒れていて。 窓から投げ込まれた黒い手榴弾。閃光。衝撃。 人の形だったモノが肉片に変わって。 全身を赤く染めたさつきが、かくり、と膝を折る。 たんたんたんたんたんたんっ 軽い音と共に身体が壁に叩きつけられた。衝撃に、壁が削れてゆく。 「あーもう、いいですよ。弾の無駄です。発狂して暴走する前に、回収して下さい」 すごいことが出来ると思ったのに。初めて手に入れた力だったのに。 ただ、ただ認めて欲しかっただけなのに。 ……どうして…… 「ええ、それが一番でしょう。薬物が効く保証がありませんから」 ……どうして、こんなことになってしまったんだろう…… ………わたしは、だた……… 「やめ、…」 声には、ならなかった。 ただ、見ている。 波のように指先から感情が消えていくのを、祭は自覚していた。 無表情に突っ立った彼女の横、フル装備の特殊部隊が突入していく。 見知った学校の、見知った部屋へと。 外からの射撃。 ……彼女を、おびき出すための。 部屋の中に入ったところで手榴弾が投げ込まれ、近距離からの射撃で少しでも威力を上げようと部屋になだれ込む。 (彼女は既に破壊神の一部なんです) でも、と思いはする。口には出さない。否、出せない。 言葉を飲み込むことが、すでに彼女の一部になってしまっていた。 そして、悲鳴が聞こえた。悲痛な、咆吼が。 中の惨状は予想が付く。 これまで何十人という妖怪を殺してきた。 テロリストも、人間も、殺してきた。 (やっぱりまた、守れない) 暖かかった時間、話しかけてくれた人。 もう謝ることすらできないとき、一体どうしたらいいんだろう。 心の何処かが囁きかける。 (どうして……?) そんなことは関係ないって、分かっているのに。 どんな理由だって、意味なんて持たない。 ゆっくりと、部屋へ入る。 「対戦車ライフルまで効かないとは、」 感心したように彼が呟くのが聞こえた。 床に散らばったバラバラの肉片と、肉と木のこげたにおい。 (どうして、こんなことに) 彼と暮らすために、頷き続けたのは、いけなかったのだろうか。 どこで、間違えたのだろう。 大事なことはただ、これが現実だということ。 友人だった人たち、一緒に笑っていた人たち…。 「あーもう、いいですよ。弾の無駄です。発狂して暴走する前に、回収して下さい」 その声と共に銃声が一斉にやみ、彼女の、サツキの身体が壁からずるり、と滑り落ちた。 その目は虚ろで、。 一体、彼女の何処が正気だっていうのだろう。 自分を閉じてしまえるってことが、そうなんだろうか。 「液体窒素を使用しますか?」 「ええ、それが一番でしょう。薬物が効く保証がありませんから」 確かに祭には、そんなことは出来なかった。 たとえ誰かを殺しても、友人を裏切っても。 それでも光輝の側にいるために、こうやって、ただ立っている。 自分を、失うことすら出来ずに。 男に答えてから、国後は振り向いた。いつも通りの笑顔で。 「どうしました、祭さん? 大丈夫ですか?」 祭はそれに応えず、前にでると、氷漬けになっていくさつきにそっと触れる。 「祭さん? ほら、風邪を引いてしまいますよ、」 国後の声も聞かず、祭は弱々しく微笑みながら氷を撫で続けていた。 謝ることなんて、出来はしない。 選んだのは、自分なんだから…。 |