------------------------------------
 コラガカイナニイダクモノ  
------------------------------------


+ 8-a:天罰と呼ばれるモノ +


  
「あ、あ、あぁあ゛あああああああああーーっっ!!!!」
 黒と赤、ピンクの肉片、赤、あか赤……。

 その咆吼が、自分のものだと気付くのにしばらくかかった。
(どうして……)
 こんなことになってしまったんだろう。
 部室にいたら突然パソコンの電源が落ちて。
 悲鳴が聞こえて。
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうして……、


「うーん、困りましたねえ、無傷ですか、」
 声が、とおくから響く。
 コレはなんだろう。ちぎれた手。にんげんの。
 何でテクびだけがここにあるのだろう?
 かなえだったモノ内田だったモノ人間だったモノ赤と黒。そしてピンク。


「対戦車ライフルまで効かないとは、」
 扉を開けたらかなえが倒れていて。
 窓から投げ込まれた黒い手榴弾。閃光。衝撃。
 人の形だったモノが肉片に変わって。 
   
 全身を赤く染めたさつきが、かくり、と膝を折る。
 たんたんたんたんたんたんっ
 軽い音と共に身体が壁に叩きつけられた。衝撃に、壁が削れてゆく。

「あーもう、いいですよ。弾の無駄です。発狂して暴走する前に、回収して下さい」
 すごいことが出来ると思ったのに。初めて手に入れた力だったのに。
ただ、ただ認めて欲しかっただけなのに。

 ……どうして……

「ええ、それが一番でしょう。薬物が効く保証がありませんから」
 ……どうして、こんなことになってしまったんだろう……
 ………わたしは、だた………






□------------------------------------------------------□






+ 8-b:制裁の裏側 +

   

「やめ、…」
 声には、ならなかった。
 ただ、見ている。
 波のように指先から感情が消えていくのを、祭は自覚していた。

 無表情に突っ立った彼女の横、フル装備の特殊部隊が突入していく。
 見知った学校の、見知った部屋へと。
 外からの射撃。
 ……彼女を、おびき出すための。

 部屋の中に入ったところで手榴弾が投げ込まれ、近距離からの射撃で少しでも威力を上げようと部屋になだれ込む。


(彼女は既に破壊神の一部なんです)
 でも、と思いはする。口には出さない。否、出せない。
 言葉を飲み込むことが、すでに彼女の一部になってしまっていた。


 そして、悲鳴が聞こえた。悲痛な、咆吼が。


 中の惨状は予想が付く。
 これまで何十人という妖怪を殺してきた。
 テロリストも、人間も、殺してきた。

(やっぱりまた、守れない)
 暖かかった時間、話しかけてくれた人。
 もう謝ることすらできないとき、一体どうしたらいいんだろう。
 心の何処かが囁きかける。


(どうして……?)
 そんなことは関係ないって、分かっているのに。
 どんな理由だって、意味なんて持たない。

 ゆっくりと、部屋へ入る。
「対戦車ライフルまで効かないとは、」
 感心したように彼が呟くのが聞こえた。

 床に散らばったバラバラの肉片と、肉と木のこげたにおい。
(どうして、こんなことに)
 彼と暮らすために、頷き続けたのは、いけなかったのだろうか。
 どこで、間違えたのだろう。


 大事なことはただ、これが現実だということ。
友人だった人たち、一緒に笑っていた人たち…。

「あーもう、いいですよ。弾の無駄です。発狂して暴走する前に、回収して下さい」
 その声と共に銃声が一斉にやみ、彼女の、サツキの身体が壁からずるり、と滑り落ちた。


 その目は虚ろで、。
 一体、彼女の何処が正気だっていうのだろう。
 自分を閉じてしまえるってことが、そうなんだろうか。

「液体窒素を使用しますか?」
「ええ、それが一番でしょう。薬物が効く保証がありませんから」

 確かに祭には、そんなことは出来なかった。
 たとえ誰かを殺しても、友人を裏切っても。
 それでも光輝の側にいるために、こうやって、ただ立っている。
 自分を、失うことすら出来ずに。


 男に答えてから、国後は振り向いた。いつも通りの笑顔で。
「どうしました、祭さん? 大丈夫ですか?」
 祭はそれに応えず、前にでると、氷漬けになっていくさつきにそっと触れる。

「祭さん? ほら、風邪を引いてしまいますよ、」
 国後の声も聞かず、祭は弱々しく微笑みながら氷を撫で続けていた。




謝ることなんて、出来はしない。
選んだのは、自分なんだから…。   

 

 

back +  top +  next