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水面に奇妙な映像が見えだしたのは、二日後のことだった。 コップ、洗面台、校庭の池。川面。 どうやらそれは場所を選ばないことも判った。 うんざりするほどにだ。 三日目から自覚したのは、異常な視力だった。 四階にある化学室から校庭を見下ろしていたとき、ふと、当たり前のように一人一人の顔の見分けが付くことに気が付いたのだ。 集中すれば表情や口の動きまでわかる。 一体、何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。 閉めきって、エアコンを入れた自室。 じっと、コップの水面を見つめる。 ふっ、と浮かび上がってくる映像。何とかそれを逃さないように、ピントを合わせようとする。 (何なんだろう……) うまくいかない。 不思議ではあったが、さつきは何故かこの変化、…そう、変化だ。身体が何かに変わ ているのは間違いない…を、怖いと思わなかった。 奇妙な高揚感。 もう一度、集中してみる。 (部室?!) たぶん、いや、確かに。 化学室の方だろう、この机は。そばにピンクの塊が落ちている……? そこまでを理解したとたん、ブレーカが落ちるように画像が掻き消えた。 もう一度。 頭に思い描いて水面を睨み付けると、今度はちゃんと、部室が浮かんできた。 ただ先程と違うのは、そこが真っ暗な空間であること。それに、あの変なピンクの物が落ちていないことだけだ。 何度も繰り返すうち、さつきはその仕組みが判ってきた。 はじめの、象がぼやけていたのは、何を見たいのかを、特定しなかったからだ。 見たいもの、たとえそれが閉められた引き出しの中であったとしても、強く願って水面を見つめれば数秒の間だけだが象を結ぶことが出来る。 (すごいすごいすごい、すごいっ) 興奮が彼女を包み込んでいた。 力。一週間前まで考えられもしなかった力。超能力、魔力。……呼び方なんてどうでもいいことだ。 重要なのは、現実にそれが存在するという事実。 それが全て。 子どもの頃から心の片隅で願っていた奇跡。特別な力。証。 誇れる何か。誰でもいい、じゃなくて、私にしかできないこと。 喜びの波がひとしきり引いて、あることに気付き、彼女は独りごちた。 ともかく、これで、 「……これで赤点はとらなくてすむってことだ」 |