ドリー夢小説  貴方との初めての出会い

 

 近所に、公園がある

 都市の緑化のための広い敷地子供の遊具と小さな池

 そして、この時期になると、こんなに植えてあったのかと驚くほどの桜

 オフィス街だから、夕方にはサラリーマンが集まって騒ぐけれど、昼間は何処からか子供連れの母親が集ってお茶会などをひらいている、のんびりした公園

 この時期だけどこからともなく、いっぱい湧いてくる屋台が好きで

 はよくこの公園に足を向ける

 近所だから、部屋着に近いラフな格好花見は一人でするに限る、が身上の

 昼間だと友達に会う可能性があるから、出来るだけ夜を狙って

 コンビニで飲み物を買って(屋台は高いの!)、ふらふらと屋台を冷やかす

 屋台近辺は、人混みがすごい

 知らない人の群れ酔ったサラリーマンが、タコの入っていないタコヤキを美味しそうに食べていて(しかもあそこのは、よく生焼けだ)

 子供を連れた若い夫婦が、真剣に袋を迷って綿飴を買っていて(中身、同じだよ?)

 塾帰りだろうか、それともサボリだろうか、小学生が金魚救いの前、大声で騒いでいる

 私は、こういう雑多な人間を見るのが大好きみんな自分のことに一生懸命笑ったり、怒ったり、喋ったり、時々酔った人の喧嘩もあったりして

 花見より、人見に来ているのかもしれない

 は傍観者で、楽しそうな人達を眺めて楽しみたいから

 を三本、充分に吟味してから買って、イチゴ飴も買って、ついでにべっこう飴を買い足して

 人混みがよく見える高台の木の側で、イチゴ飴からもくもくと食べ始める

 飴をくわえたまま、辺りを眺めていると、呆れた

 ……何、あれ 

 不思議な集団に目が行く

 もう夜の八時過ぎこんな時間にビニールシートを引いているのは、大抵サラリーマンのおっさんや学生の集団、なんだけど

 ものすごーく、それはもう浮いてるその一角

 周りをいく人々も、ジロジロ見ているが、本人達は気にしていないみたい

 高そうなゴザの上に、七人の男性が座っている

 まず一番目が行くのは、高校生くらいの、美形の双子

 そこらのモデルより、全然キレイ離れて座っているけれど、どう見ても一卵性の双子

 しかも、片方の腰には、隣に座った男から腕が回されている

「……リアルホモ……?」

 まあ、腕を回している男も長身で、前髪で目が隠れてるけど、確かに整った顔立ちだから、許せるけど

 しかも日本人には見えないから、そういうお国柄の人なのかなイタリアとか(偏見か)

 そのビニールシートの上には、長身の男だけじゃなく、外人さんがいっぱい

 さらさらの金髪の子供が缶ビールを持ってはしゃいでいるし(未成年だよね、いいの?)、巻き毛の銀髪の子供は、舞い散った花びらを規則的に並べている(なにが楽しいんだろう)

 黒髪だけど蒼い眼をした、彫りの深い(何処の国の人なんだろ)人と、その隣に居るのは……うん、あれはちゃんと日本人

 この二人はスーツにネクタイ(くくう、萌え!)

 男だけの集団、普通はむさくるしくなるのに、この人達はものすごく華やかで

 舞い散る桜の下、楽しそうに会話を交わしているだけなのに、人目を集めている

 特に、女性だけのグループは、必ず立ち止まって、指をさして、ひそひそと笑い合っている

 気持ちは分かる誰が良い? なんて言っているのが、丸わかりの光景

 はパックジュースを取り出してすすりながら、手すりににもたれかかり、それを見ていた

 なんて観察しがいのある人達

 向けられる微笑みも、動作の一つも、周囲とは段違い

 本当に、どんな素性の人達なんだろう

 知りたい、知りたい、知りたい! ……もっと近づいて、会話を聞く……?

 でも、それは人間観察のルール違反な気がするし……

 バリバリとべっこう飴を噛んで、は指を立てて考えてみる

 芸能人? だったらが知っていてもおかしくないし

 それにそんな雰囲気じゃない大体、あの双子の片方みたいに、男といちゃついてるなんてあり得ないだろうし

 んー、注目を集めても構わなくて、人種がごちゃごちゃで……?

 外資系のサラリーマン?

 スーツなのは、二人だけだから、それも違うか

 考えれば考えるほど、訳が分からない

「んー……」

 溜息をついて、ふと足元に目をやると

「んん?」

 キラリ、と何かが光る目をこらすと、五百円玉

 ラッキー! 今日のもうけは、コレで千二百五十円ナリ

 祭だからか、宴会だからか、暗いからなのか、はたまた全ての要因が重なっているからかこの公園に来ると、はよく物を拾う

 高そうななんかも拾ったことがあるしネクタイなんかは毎日何本も落ちてる

 まあ、それ以上に大量のゴミが落ちてはいるんだけども

 ルンルンとご機嫌に五百円玉をポッケに入れて

 は、イチゴ飴を食べ終えて、を取り出した

 あーん、と囓ろうとした時

 ……隣から、強い視線を感じる

 ? 何?

 口を開けた状態で、横を見ると

「!?」

 うわびっくりした! 心臓止まるかと思った! 近いよ!

 すぐ隣で、人差し指を物欲しそうにくわえ、こちらを見ている男がいた

 黒い猫っ毛、目の下にはクマ、猫背で小首を傾げて、じいいと

 その視線の先には、

(なんじゃ、こいつ)

 思わず、は取り敢えず一旦口を閉じて

 まじまじとその男を見た

 目が合…………わない男の視線は、を追っているから

 ひょい、と上に動かすと、上に横に動かすと、横に

 人差し指を口にくわえたまま

「あはははははは!」

 その、まるで骨ををじっと見て首を動かす犬みたいな仕草に

 は思わず大爆笑してしまった

 片手にを持って、もう片方の手にジュースを持って

 身体を手すりにもたれるようにして笑う

 あー、可笑しいだって、小さい子供なら分かる

 でもこの男は、どう見ても二十代、しかも半ばといった感じで

 普通なら不審で、引くだろうけど、そんな感じがが全然無くて

 純粋に、一心に、を見つめているから

「っ、あー……、笑いすぎてお腹痛い……、面白いねえ、貴方」

「……そうですか?」

 きょとん、とこちらを見てくる、無表情な顔

 まるで、爬虫類だとか両生類だとか、そんな感じ

 人間の男、というより、変なマスコットキャラみたい

、好きなの?」

「食べたことはありませんが、絶対に好きです」

 笑いすぎて目尻から滲んで来た涙をそっと拭う変なヤツ

 だって、言ってることもおかしいし

「食べたこと無いんだ?」

「はいなので買いに行こうと思ったら、身体に悪いと現金を取り上げられました」

 誰に、だろう保護者?

 あはははは、面白いなあこの人お小遣いに百円玉とか、一生懸命握ってそう

「じゃ、仕方ないから、一本あげるよこっちは袋から出しちゃったから、……えーっと、かかってる飴はミルクのと普通の、どっちが良い?」

「どちらが甘いですか?」

「んー、ミルクの方かな」

 はい、と差し出すと

「ありがとうございます!」

 無表情なのに、心なしか目が嬉しそうで

 その場でペロペリとビニールをむくと、もぎ、と囓り始める

 屋台の達人のが選んだ、絶対に中のリンゴも酸っぱくない、飴がたっぷりかかった

 嬉しそうに、もぐもぐパリパリと食べる

 あー、動物に餌をやっているみたい



 も隣でを囓りながら、その状態を観察する

 あっという間に、男は食べ終えて

 名残惜しそうに、串にかすかに残った飴をなめている

 その状況に、もう一度吹き出しそうになって

「っ、あはは、意地汚……、コレも食べる?」

 そう言ってヒヨコの形のべっこう飴を取り出すと、ピコンと猫が耳を立てるみたいに、こちらを見てきた

「良いんですか?! ありがとうございます、愛してます!」

 いいよー、とそれを手渡すと、ばりばりと端から囓り始め

 ごくん、とすぐに全てを食べ終えてしまう

 ああこの人ってば、あめ玉とかで誘拐されそう……

「……美味しかった?」

 くすくすと笑いながら訊くと

「ええ、すごく私は普段こういったものを食べる機会が無くて……止められてるんです」

「おやつを?」

「はあ、あまり摂るなと特にこういった着色料の多い物は」

 きっと、この人の保護者は、過保護で厳格なのだ

 ……いや、この年だと奥さんかな?

「彼女に? 奥さんに?」

「違いますよ、私は結婚していませんし恋人もいません」

 きょとんとした目でこちらを見てくる

 ふうん、きっと、本当のこと

 嘘つきかどうかは、は大抵目で分かるから

「ともかく、見ず知らずの私に美味しい物を、ありがとうございましたええと……」

、だよ」

 言いよどんだので、教えてあげると

 その人は、にい、と微笑んで

さんですか素敵ですね」

 嘘のない顔で言ってきた

 ……面白い、人

 そんなこと言われ慣れてないから、えっと、照れるよ?

「そうかな……、普通だと思うけど貴方は何て言うのー?」

です」

 その人は、ポケットに両手を入れ、覗き込むようにして答えてきた

 ……どうでもいいけど、顔、近い……

 うー、変な人変な人

さん、ねぇ」

でいいですよはおやつ奢ってくれましたし、特別です」

 うわお、のこともいきなり呼び捨てなんだ

 しかも、この人、良く見ると背高い

 指をくわえてなければ、結構格好良いし……

 あうー、近くにいられると、なんていうか、駄目だ

 特に造作のできが良い人間は、駄目だ

 は人間は遠くで眺めている方が良い

 慌てて、取り敢えず適当な言葉を口にする

「えと、は、やっぱりお花見? 誰かと一緒に来てるんだよねこんなとこで、一人で何してたの?」

 いきなりの質問攻め

 変……だよね……うー初対面の人間なんか、喋り慣れないから

 でも、は普通に受け答えをしてくれた

「ええ友人とお花見に来ていたのですが……落とし物に気が付きまして一人で探していたんです」

 あうこうやって、自然に会話を続けてくれる人っていい

 こちら向かないで、下の桜を眺めながら、話してくれるし

「そっかぁ落とし物……探してみて無かったら、朝になってからのが良いかもね暗いし人が多いから」

は、一人ですか?」

 ……うん、まあそうだよそうなんだけど

 事実だから、他に言いようがないんだけど

 でもなんか、一人でお花見って、寂しい女の子みたい、だよ、ね……

「まあ、うん、そう……ええと! 家が近いから、よく散歩に来るの」

 言い訳みたい、と思いながらも真実を口に出す

 だって、それ以外言いようがない

 でも

「へえ、風流ですね素敵です」

 は目を細めて、枝を伸ばした桜を見上げた

 は、思わず、そんなの横顔を見てしまった

 だって、馬鹿にされるかな、と思ったのに

 ……変な人

「……はさ、落とし物って、何を落としたの? よくここに来るし、結構、下を見たりもするし……見つけたら、ひろっとく」

 その言葉に、うーん、とは迷ったようにして

 それから口を開いた

「……ですとても大切な物なので、踏まれたりしたら困ると思って、探していたのですが……、暗くて見つかりません」

 うーんそれは、確かに厳しい

 この広い公園、なんて、どこにでも紛れてしまう

「ん、わかったもし見つけたら、拾っとくね」

 にこ、と笑うと

 ありがとうございます、とも笑って

「では、友人の所に戻らなければいけないので本当にごちそうさまでした」

 ぺこん、と首だけを傾けて礼を言い

 猫背のまま、人混みの中へと消えていった



 ……不思議な人変なキャラ

 あんなに特徴的な外見だったのに、この雑多な空間の中、しっかり溶け込んでいたし

 顔がよいのに、クマだし無表情だし

 背が高いのに、猫背だし

 今日は、なんていうか、もう、お腹いっぱい

「も、帰ろ……」

 誰とも無しにそう呟いて

 は、とことこと家への道を辿りだした





 ちょっと混むけれど、の家へは、屋台が建ち並ぶ中を抜けた方が早い

 残りの飴の袋を指の先に引っかけてパックジュースのストローをくわえて

 人混みを抜けるのには、コツがある

 流れをよむこと、逆らわないこと隙間は必ずあるし、慣れれば動くべき線も見える

 という訳で、は慣れた物ひょいひょい、と人波をすり抜けていく

 と

 いきなり、ききい、とブレーキをかけた

 どん、と後ろから来た人にぶつかって、慌てて謝る

 立ち止まったのは、人だかりが出来ている、一つの屋台の前

 人間の頭で屋台の中は見えないが、どうせ場所でわかってる飴細工の屋台きっと今も、鶴だの龍だのを実演しているのだろう

 その人だかりの、はしっこ

 屋台と隣の屋台との間ゴミに紛れて

「見つけた……!」

 ああ、なんていうか、らしい

 先程と同じように、指をくわえて、飴細工を見てたんだろう

 そこには、が、ぽつんと落ちていた

 幸い、隅っこに落ちていただけ合って、踏まれたような様子もない

 ほっとして、素早く拾う

 ぽんぽん、と笑顔で土埃を払って

「……ん?」

 よく、考えたら

 見つけたはいいものの、コレ、どうやってに渡そうか……

 連絡先も知らない

 名前しか知らない

 今日あったばかり

 十分くらい、話していただけの、

 えっと

 ………………

(……でも、すごく大切な物だって、言ってたし……)

 その場で立ち止まり、しばらく悩んでから

 は、人混みの中、きびすを返した



 



 自分の口から漏れるのは、溜息じゃない

 うめきだ

「うー……」

 だって、見つからない

 探した結構探した

 いや、すごーく探した

 何度も人混みの中を往復したし、公園の隅っこまで歩いてみたりした

 でも、あの猫背の白いシャツは見つからない

 もう帰っちゃったんだろうか

 でも、友人の所に戻るって言っていたし

「うぅー……」

 困って、人混みから離れた場所

 先程、と話した高台の手すりまで戻ってきてしまって

 …………わかってる

 がこんなにを探す必要なんてない

 大切だとは言っていたけど、取り乱した様子もなかったし

(だって、に気を取られるくらいだもの)

 だからも、本気でこの人混みの中、が見つかるなんて思ってない

 しかも、が見つけて拾ったなんて、は知らない

 元の場所に戻すなり、目立つ場所に置いておくなり、警察に届ければいい

 わかってる

 ただ単に

 渡したいのだ

 それでまた、に、ありがとうございますって笑ってほしい

「………………」

 でも、いない

 溜息をつき、手すりにもたれかかって

 は眼下で賑やかに宴会を繰り広げる人々を見た

(ああ、あの人達……まだいるんだ)

 さっき見た、謎の美形集団高そうなゴザに、高そうな重箱、高そうなお酒

 あーあ、美形の双子の片方、さっき腰抱かれてた人の膝で寝ちゃってるし

 もう片方も、おちょこ片手に結構できあがっているし

 金髪の子供は、ゴザの上に突っ伏してるし

 銀髪の子供は、花びらで芸術的な幾何学模様をゴザの上に展開してるし

 多少まともそうに見えるのは、スーツの二人組くらい眼鏡の人、顔は赤いけど

 しょせん、酔っぱらいの集団だ

 まあでも、顔の所為か雰囲気か、回りのブルーシートとは、やはり格が違うようには見える……

 ふう、と、もう一度溜息をつく

 こうして見渡しても、やっぱりはいない

 折角、見つけてあげたのに

の、馬鹿……」

 思わず愚痴の一つも言いたくなって、呟く

「酷いですよ?」

 と、耳元でした、声

「っ?!」

 慌てて、ばっと振り向いた

 猫背で両手をポケットに突っ込んで

 にい、と笑って、こちらを覗き込んでいる、夜色の瞳が目に入る

 はしばらく楽しそうにを見つめてから、口を開いた

、会えて良かったです随分探しました」

「え……? あ、なん、で?」

 あの、だから、顔、近い、よ……?

 きっとは、耳まで赤い

 だから、そうやってあまり見ないで欲しい

「飴、頂いたの、ばれましてきちんとお礼をしてこいと叱られました」

 は、変わらない無表情

 でも、目だけが楽しそうに笑っているのが分かる

「きちんとお金も返して貰いましたから、に何でも好きな物、買って差し上げます……これでも私、お金持ってますよ?」

 あう

 どんな理由であってもを捜していてくれたことが嬉しい

 もう一度会えたのが、嬉しい

 それも、わざわざお礼の為に、来てくれたなんて

「……ん、じゃあ、……屋台、回って考えても良い?」

 言うと、は頷いてくれて

 隣に並んで、ゆっくり人混みの中を歩く

 綿飴、クレープ、べっこう飴、チェロス、チョコバナナ……、甘いもの屋台に出会う度、は嬉しそうにそれを買う食べる

「あの、胸焼けとかしない……?」

「え? 美味しいですよ?」

 は、チョコバナナだけ、買ってもらって

 大量の甘味を嬉しそうに消費するに訊いてみたが、全然平気そう

 うわ、まだ見てるまだ買うんだ……

 いちご飴も、あっという間にの口に消えて

 口の端についた飴のカケラを舌で舐めとりながら、が訊いてくる

「で、は何か欲しいもの、ありました?」

 …………て、言われても

 実は、あんまり、ない

 別に何かが欲しかった訳じゃなかったから

 並んで歩きたかっただけだから

「んー、チョコバナナ買ってもらったし、これでいいよ?」

「欲のない人ですねぇ」

 呆れたように、こちらを覗き込んでくる瞳

 だから、身長差があるから、そうやって見てこないで欲しい

 近いんだよ

 顔が赤くなるのが分かる

 そりゃ、顔をそらすなり、身体を離すなりすれば良いんだけど

 分かっていても、その目で見られれると、固まってしまって

「じゃあ、コレ、差し上げます先程そこの露店で買った物で申しわけないのですが……」

 そう言って、の手を握ると、そっと何かを押しつけた

 右手の中に、小さな感触

 掌を開くと……?!

 銀色の確かに、酔った恋人向けに、ちょっと高めに値段を設定した店があったのは知っているけど

「ああああ、あのっ?! ?!」

「あ、入りませんでした? 多分そのサイズかと思ったんですが」

「ちがっ、えと、……」

 言うと、きょとん、とした顔でこちらを見てくる

 ちょっ、落ち着け

 きっと竜崎のことだから、別に深い意味はなくて

 他に適当な物を売っている店がなかったから

 そうそうなのだきっと

 そういうことにしておこう……

「? 、顔、赤いです」

 ますます不思議そうに、覗き込んでくる

 あうあうあうあうあうあう

 いつもなら、至近距離で止まるのに

 唇も笑みも形のまま、両手をポケットに突っ込んだまま

 の顔が目の前に迫ってきて

 頭も身体も固まったまま、唇に触れた、柔らかい感触

 ついでに、ぺろんと、舌の感触

「〜〜〜〜〜〜〜っ?!」

 その刺激で、ばっと身を離して

 真っ赤になってを見ると、にやりと笑ったその顔で

「……、口にチョコ、ついてましたよ」

 ぬけぬけと言う

 何てヤツ悪いなんて思ってない表情

 からかってる、絶対をからかってるうー、顔が熱い馬鹿

「っ、

「何ですか?」

「そういうことする人には、コレあげない!」

 そう言って、が取り出したのは、先程の

 渡し損ねてしまって、今まで持っていたもの

 驚いた顔で、こちらを見てくる

 やっぱり、コレ、のだったんだ

「すごいです諦めかけていたのに……見つけてくれたんですか!」

 ……喜ぶんだ

 そう、喜ぶんだ……

 意地悪して、渡さないでおいてあげようとも思ったけど

「はい、もう無くさないようにね」

溜息をつき、に手渡した

、ありがとうございます」

 うきうきと、をつまみ、は大切そうにしまう

 ……馬鹿だなあ、そんなに大切な物、無くしたりして

「ん、たまたま見つけただけだから」

「でも、わざわざ私に渡そうとしてくれたんでしょう? だから、公園にいて下さったんですよね今日あったばかりなのに、一言言っただけだったのに、優しすぎます このお礼、必ずしますね」

 何が良いですか? とが覗き込んで訊いてくるから

「別に、お礼なんて……あ、えっと、あの」

「なんですか?」

 うう、こんなこと、言って良い物だろうか

 顔が赤くなる耳まで赤いかもしれない

 でも、駄目もとで

「あの、お茶のみにいったりとか駄目かな? の美味しい店知ってるんだけど、その、、甘いもの好きみたいだし! い、嫌ならもちろん、いいんだけどっ」

 俯いて、必死で言った耳元に、囁かれる、嬉しそうなの声

「はい、喜んでご一緒します」

 …………

 きっと、に喜んでいるんだ

 でも、それでもいい

 また、会える……?





 その後、の電話番号を教えて

 では、日時は後で電話します、とはにやりと笑って告げて

 あの猫背のまま、ひらひらと手を振って、見送ってくれた

 不思議な人変な人

 桜の下で見た、夢だったのかと思うくらい

 でも、の手の中には、確かにから貰ったがあって



 まだ熱い顔の火照りを冷ます為、公園を抜け、人気のない道を早足で歩く

 空を見上げると、街灯があっても、星が綺麗で

 は、何故かすごく、幸せだった